もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー
 うしろからこっそり近よって。
「こーら!」
 頭にこつん。
 ゲンコツを落とすと、涼子(りょうこ)(ほほ)をふくらませて振り向いた。 
「いったぁーい。も、明緒(あきお)ってば、なにすんのよう」
「なにすんの…じゃないでしょ。さっきから、なにやってんの、あんたは」
「べっつにィ。ただ明緒の大っきらいな藤島(ふじしま)くんを、見てただけですう」
「うっ……」
 思わず絶句するあたしを、涼子がニヤニヤおもしろそうに見てる。
 くわしい事情は話してないけど。
 涼子には、あたしはアイツがきらいだって、しぶしぶだけど言ってある。
 なんでって、
 涼子が、アイツを――藤島を――好きになっちゃったから。
 藤島の名前を聞きたくなかったら、あたしは、そう素直に言うしかほかに、涼子の口をふさぐことができなくて……。
< 4 / 153 >

この作品をシェア

pagetop