もういちど初めからー塩キャラメルとビターチョコー
 授業の終わりを知らせるチャイムが鳴る。
「さて……」
 ひとりごとみたいにつぶやいた、あたしのシャツのすそを涼子(りょうこ)がつかんだ。
 風にばらける髪のしたから、まぶしそうにあたしを見てる。
「ね……。あたし変じゃない? 顔」
 その言いかたがまだちょっと遠慮(えんりょ)がちだったから、あたしにはそれがおかしくて。
「変なのは、いつもじゃん」
 からかってみると
「ひどーい」
 涼子が、いつもみたいに(ほほ)をふくらませて……。
「あはははは」
 笑いながら、あたしは気づく。
 こんなのは、思い描いていた仲直りとは全然ちがうのに。
 それでもいいと思っているわけ。
(そう……)
 あたしはこれでいいと思ってる。
 別に、泣かれたからじゃない。
 泣き落としなんて恥ずかしいことだと思うし、大っきらいだけど。
 それでもきっと、あたしはもう、ケンカの理由をむしかえしたりしないだろう。
 なしくずしの仲直りだってなんだって、あたしにはこれでよかった。
 だって、あたしの一番はいつだって自分の気持ちで。
 あたしには、涼子があたしをわかろうとしてくれなかったことより、そんな涼子を許せない自分のほうが悲しかったんだから。

「…………」
明緒(あきお)……?」
 涼子にのぞきこまれて、黙りこんでいた自分に気づく。
「あ? うん。行こっか」
 考えていたのは、藤島(ふじしま)とのこと。
(ばからしい!)
 なんでここで、アイツとのことが頭に浮かぶのよ。
 アイツとのことが、いつまでも心に引っかかっているのは、まさかアイツを許せない自分のせいだとでもいうの?
(ジョーダンじゃない!)

 あたしはアイツがきらいなんだから!

 許す…とか、許せる…とか。
 アイツとのことは、そんな次元の話じゃないんだから!


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