惚れたら最後。
「大丈夫だったか、琥珀。助けてやれなくてごめん」

「いいよ、絆に止められてたんでしょ?
分かってた、あえて手助けしないつもりだって。
どの道、絆にふさわしい女だって認めてもらえるまで時間かかると思ってたし」

「そっか」



心配している様子だったけど、憂雅さんはほっとしたように笑った。

しかし、その顔を先に玄関に上がった絆に向けると呆れたように口を半開きにした。



「絆、すました顔のつもりだろうが、だらしねぇ面してるからな。
てかそれなんのニヤつき?」



そこにいたのは口角を上げて嬉しそうに笑う、若頭の貫禄なんてまるでない絆。

彼は自分が笑っていることに気がついて、無言で口を手で覆った。

そして周りをキョロキョロ。

組長たちが周りにいないと確認すると、ちょっと恥ずかしげに告白してきた。



「琥珀の口から『俺にふさわしい女』って聞いたら嬉しくて。俺との将来考えてくれてんだと思うと感情の歯止めが聞かない」

「……」

「……」



心底嬉しそうに笑う絆に、憂雅さんと私は引き気味な表情で顔を見合わせた。



「……は?なんだよふたりとも、その反応は」

「……お前も大概だなと思って。
だんだん同じ立場だった颯馬さんの気持ちが分かってきた」

「なんで叔父貴?」

「いや、なんでもない、とりあえず理叶さんの後ついて行こう」

「ん、ああ」



憂雅さんが絆を先導して歩き、私はその後ろについて歩いた。

長い廊下を歩いていたらふと、自分の心が高ぶっていることに気がついた。

そう、憂雅さんがいる手前引いた素振りを見せていたけど、実際絆にああいう風に言われて嬉しかっんだ。


私も大概だ……。

気をゆるめたら笑ってしまいそうで、気持ちを表情に出さないように口を固く結んだ。
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