惚れたら最後。
「なぜ……裏切った。根回しは完璧だったはず」



数分後、暴れる気力のなくなった詐欺師の男はぼそりと呟いた。



「裏切ったぁ?何を惚けたことを。
だいたい、お前は上に捨てられたんや。残念やなぁ」

「どういうことだ」

「あんたらの考えてる事はお見通しやって伝えたら、あっさりお前のこと切り捨てたで」

「……」



真実を聞いた男は望みが絶えて意気消沈した。

すると望月は身の毛のよだつような笑みを浮かべた。



「散々俺たちのシマを荒らしてくれたお前らには地獄を見せたる。生きてバラしてもええし、どないしよう。
半グレなんて社会のゴミ、気兼ねなく拷問できるなぁ……楽しみやわ」



虎を思わせるその気迫に無関係の私も震え上がった。

……なんて恐ろしいの。

これが、西日本のアウトローをまとめる男なんだ。

池谷は「ひぃっ……」とみっともない悲鳴をあげ、無様に失禁した。



「さぁて、野郎ども撤収や。サツに嗅ぎつけられる前にここを出るで。
赤星、荒瀬組の若姐さんはうちの本家に連れて帰る。丁重に扱え」

「はい」



振り返って指示を出した望月は二重人格か?と思うほど満面の笑みを浮かべている。

ギャップの温度差についていけない私は唖然とするしかなく、赤星に連れられその場から離れた。
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