惚れたら最後。







新しいことが始まるシーズンは、時間が経つのが早く感じる。

胸にはコサージュ、ストライプのシャツに絆に買ってもらったスーツを着て、私は小学校の入学式に来ていた。



「……遅いな」



あと5分で式が始まってしまう。

しかし拓海さんが会場の体育館に来ていない。

通知の来ないスマホの画面を眺めて、それから視線を出入口に向けた。

と、その時。



「あ、拓海さんこっち!」

「おう、ごめんごめん!」



グレーのスーツを着た拓海さんが小声で謝りながら小走りで近づいてきた。

彼は肩で息をしながら確保していた隣の椅子に座った。



「はぁ、間に合わないかと思った」

「もしかしてあれだけ言ったのに時間間違えたの?」

「違うって渋滞に巻き込まれんだよ。……で、星奈と流星は?」



拓海さんがキョロキョロと辺りを見回すと同時に『新入生の入場です』というアナウンスが響く。

そして保護者入口とは別の扉が開き、新1年生が先生の後をついて入場してきた。
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