ハツコイぽっちゃり物語

想う(葵生side)


―葵生side―




突然だけど、俺はたぶん、米倉さんを泣かせちゃうかもしれない――とだけ先に言っておこうと思う。



イルカのショーを見終えた後、米倉さんの友達がクレープを食べたいと言い出し、俺を連れて2人で買い出しに。


少し先をゆく彼女の背を見てある予感がした。いや、この予感は夏休み明けから感じていたかもしれない。


きっとその予感は的中する。


だからその時が来ることも知っていたと思う。
自分が米倉さんと距離を置く選択をすることを。



「葵生先輩は何にします?」



長蛇の列の最後尾につき、彼女が振り向きざまにそう聞く。
メニュー表を前もって手渡され、それを見て【抹茶ラテ】を指さした。


彼女はツナマヨサラダ。
甘いものは苦手なのかなと思った。
米倉さんはチョコレート、幼馴染くんはあずき。


あとは頼むだけで特に話すこともないんだけど、多分もうすぐその話が始まる。



「すみません。なんか今日一緒に居ちゃって」

「ううん大丈夫。……こうなると思ったから」


大きく見開かれた彼女は何となく分かっていたようにも思える。

『こうなると思った』と言ったのも本当におかしなくらい分かってた。


「なんだ。最初から知ってたんですか」


つまらなそうに、でも何処か楽しそうに笑う彼女。
可愛らしい顔立ちに反して結構淡々としているなと初めましてながらに思った。


米倉さんから聞いてたけどここまで冷然としているのは珍しいっていうか……なんだか異性が苦手なのかなとも思う。

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