ハツコイぽっちゃり物語

「さっきは本当にすみませんでした。ありがとうございます」


いや、さっきの出来事を蒸し返してどうする。
ただ恥ずかしいだけではないのか自分よ……。


言い終えた時にはまた治まったはずの熱が戻ってきていた。

先輩はさっきと同様に「大丈夫」を繰り返す。


や、優しい。
絶対重かっただろうに。
全体重をかけてしまっていたというのに。


でも、たとえ思っていたとしても口には出さないか。
人間だいたいそんなもんだから。


歩きながら先輩の横顔をみて、“なんて今日は素敵な日なんだ”と心の底から思う。

こんな特等席ないよ。一生。

図書室の王子様だよ?私の隣にいるの。


たまに私に笑いかける先輩に心臓が何度も射抜かれる。

もちろん会話してるから度々顔を合わせるけれど、これでも耐えてる方。
耐えられてる自分を褒め讃えたい。


「米倉さんはよく本を読む方?」

「あ、はい」

「ジャンルは?」

「ジャンルですか。……結構幅広く読みますよ。今ハマってるのは、ケータイ小説です」

「ケータイ小説って、……野いちごとか?」

「そうです!よく知ってますね」


「よく妹に『買ってきて!』って頼まれるんだよ。あと図書室にもあるでしょ。結構人気だよね」

買う時ちょっと恥ずかしいんだよね、とポツリ呟いた声に私は思わず笑った。


「レジの人が同性だと尚更。だって女の子が読むようなタイトルばっか購入してるんだよ。しかも3冊は買うからさ。恥ずかしすぎる」

思い出しながら言っているのか微かに耳が赤く染まっている。

そんな先輩をみて“かわいい”だなんて思う。

確かに男の人が購入するには結構勇気がいるかも。

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