After the Rain

目を開けると、読みかけの本が体の上にあって、いつの間にか眠ってしまっていたのだと気付く。

「一時間くらい寝てたのか……」

仕事が休みになった日曜日、軽く昼食を食べ終えた後に最近買ったばかりの本を読んでいたんだ。

ふと、窓の外を見ると眠る前までは降っていたはずの雨が止んでいた。止んだばかりのようで、空には薄っすらと虹が見えている。

雨上がりの空を見た刹那、僕の胸がドクンと音を立てた。懐かしい記憶が波のように押し寄せてくる。

頭に浮かぶのは、腰ほどの長い黒髪を揺らした儚げに微笑む女性の顔。僕がほんの二年前まで付き合っていた女性で、名前は志帆（しほ）。

彼女と過ごした日々が普通の恋人同士のような甘々なものではなかった。僕たちの関係は恋人というよりも過去の傷口を舐め合うような関係だったから……。

それなのに、どうしてこんなにも君のことを思い出すんだろう。君とはもう別れたあの雨上がりの日以来、出会っていないはずなのに。