Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編

『お口に合う物かわかりませんが、どうぞ召し上がってくださいね』

ドイツ風のずっしりした全粒粉の黒パンと、ジャガイモのスープ。川魚のフライ。ハッシュドポテト。
おそらく、彼女の精一杯のもてなしだろう。

『ありがとうございます、いただきます』

感謝の気持ちを表してからスプーンを手に早速頂くと、やはりアーベルの母はホッとした様子を見せた。
ごく普通の一般市民が公爵家の嫡男を迎えるなど滅多にないから、緊張していたんだろうな。今だこの国の身分制度は王族貴族に有利に出来ているのだから。

『おいしい!』

やむなく口にしたパンとスープだったが、焼きたてのパンと熱々のスープは、見事にぼく好みだった。

アーベルの父が腕のいい料理人だったという話は聞いていたが、 母親もなかなかの料理上手なようだ。

『とても美味しいです。おかわりいいですか?』

あっという間に平らげてしまい、遠慮なくお代わりをリクエストすると、アーベル母がクスリと笑う。

『はいはい、今お持ちしますよ』

どうやら、緊張感が完全に解れたようだ。アーベルもあきれ顔だった。

『カール、少しは遠慮しろよ……』
『仕方ないだろ!こんな美味いスープ食べたの初めてなんだから』
『まあまあ、けんかしないの!お代わりならいくらでもあるから。カール様も食べ盛りだもの、遠慮なさらないで』
『は~い!』

ぼくがスプーンを持ち上げて返事をすると、アーベル母が微笑んでくれた。やっと打ち解けてくれたようで、嬉しかった。

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