Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編
『ねえ、アーベル。ちょっと相談があるんだけど』
『……君から相談なんて、珍しいね』
うん、と頷いたぼくはにこやかに食事を平らげる。こちらをジッと見ていた彼は、ため息を着いてスプーンを置いた。
『わかったよ。今晩、僕のうちに来るといい。お母さんには言っておくから』
アーベル宅は本当に郊外に近い、寂れた場所にあった。石だたみの道と未舗装の道が混じる田舎。近所は数件の木造の家のみ。アーベル宅からグルンデシューレまでは、片道25㎞……往復で50㎞。寮に入った方が楽だろうに、彼は往復4時間かけ自転車で黙々と通いつづけてる。
アーベルの家だけは石造りで、多少立派に見えるが。それでも二間しかない。家具も直す跡が目立つ木造のテーブルや棚などのみ。そして、彼の家族は体が弱い母親のみだった。
『アーベル、おかえりなさい』
『お母さん、気分はどう?起きてて大丈夫?』
『ああ、今日は久しぶりに気分がいいんだよ。だから、夕食も作っておいたよ』
アーベルの母親はその時まだ30かそこらだったはずだが、どうひいき目に見ても10以上年上に見えた。白髪の方が多い艶のない髪、荒れたシワの目立つ肌に丸まった背中……老けて見えたのは仕方ない。
彼女とその息子のアーベルが今の政治の被害者であることは、一目で見てもわかった。
(……アーベルなら、きっと理解してくれる)