雨は君に降り注ぐ


 いじめで受けるダメージがどれほどのものか、私は人1倍分かっているつもりだ。



 私が在学していた桜庭学園は、中高一貫だった。
 中学を卒業した私は、そのままエスカレーター式に、桜庭学園高等部に入学した。

 もちろん、高等部に入ってからも、陸上は続けるつもりだった。
 陸上部は私にとって、唯一の居場所だったから。

 ところが、高等部に入学して早々、ある事件が起きた。

 それは、新入部員紹介の時。
 新しい部員の顔ぶれをひと通り眺めていた時、私は思わず、

『あっ。』

と、声を上げた。

 そこには、中学の時から私をいじめ続けてきた、いわば、クラスのボス的な女子の顔があった。

 彼女は、私と目が合うと、意地の悪い笑みを浮かべた。
 私の背筋が、一瞬にして凍り付いた。

 その翌日、陸上部で、ある噂が流れた。

『吉岡さんて、石倉(いしくら)さんのこと、いじめてるらしいよ。』

 石倉、というのは、私をいじめていた女子の名前だ。
 そう、昨日、陸上部に新入部員として入ってきた女子の名前。

 その根も葉もない噂がばらまかれてから、陸上部員の私に対する態度が、分かりやすくガラッと変わった。

 私は、陸上部でも、いじめを受けるようになったのだ。

 陸上は好きだった。
 陸上部の先輩たちのことも、大好きだった。
 それなのに。

 私は、陸上部でのいじめに耐えられなくなり、高校2年になると同時に、退部した。
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