雨は君に降り注ぐ
翌日、私は実家を後にした。
見慣れたアパートの自室に入った途端、私は、どうしようもない脱力感に襲われ、そのままベッドに倒れこんだ。
スマホが鳴る。
スマホを手に取り、寝転がりながら液晶を確認した。
涼介先輩からの着信が1件。
理子からの着信が3件。
工藤くんからの着信が、…19件。
多分内容は、どれも似たようなものだろう。
母が死んだことは、だいぶ前に理子に知らせてある。
涼介先輩と工藤くんは、そのことを彼女から聞いているだろう。
『大丈夫?』
『無理してない?』
そんな感じのメッセージが残されている。
わざわざ確認しなくても分かる。
私はスマホの電源を落とし、うつ伏せになった。
優しい人たち。
こんな私のことを心配して、わざわざ連絡をくれるなんて。
でも、今は、『優しい人たち』の『優しい』言葉を聞く気にはなれなかった。
今は、同情されたくはない。
今は、心配されたくもない。
急に、顔が熱くなった。
涙だ。
涙が、私の両目から溢れようとしているのだ。
なんで、今更。
通夜でも、告別式でも、火葬の時でさえ出なかった涙なのに。
なんで今、
なんで今、私は泣いてるの。
私は、枕に顔を押し付けた。
枕カバーに、透明のシミが広がっていく。
私は、声を押し殺して、ただひたすら泣き続けた。