雨は君に降り注ぐ
背筋を悪寒が駆け抜ける。
腕にはびっしりと鳥肌。
嫌な汗が、首筋を通り過ぎた。
パニックにはなっていなかった。
大丈夫。
この部屋には、私しかいない。
昔から、そういう勘だけはいい。
この部屋からは、私以外の人の気配は感じられない。
それでも、怖いものは怖い。
茶色い封筒は、白テーブルの上に置いてあった。
あの黒フードの男は、何らかの手段を用いて、この部屋に侵入し、また、何らかの手段を用いて、この部屋の鍵をかけてから逃走したのだ。
つまり、このストーカーは、その気さえあれば、いつでもこの部屋に侵入することができる。
…そんなことをして、何になるのだ。
私なんかを追いかけまわして、何が楽しいのだ。
侵入して、何をする気だ?
私を恐怖のどん底へ突き落す?
私を残酷な手段で殺害する?
それとも、拉致して身代金を要求する?
なんで、私なんかを追いかけるの…。
スタイルも性格も普通。
顔は、ブスとも美人ともいえない。
こんな女の、どこがいいんだ。
狙うなら、もっとかわいい子でしょ…。
私はため息をついて、その場に座り込んだ。
…もう、通報しよう。
追いかけまわされて、写真を送り付けられて、自宅に侵入されて…。
そろそろ精神的な限界が近い。
通報して、早いところ犯人を捕まえてほしい。
そう思い、私はポケットからスマホを取り出した。
110番をタップし、通話ボタンを押す前に、ふと思い出す。
今日届いた封筒には、一体何が入っているんだろう。