夜空を見上げて、君を想う。
「ただいま。」
「にぃーちゃんおかえりっ。」
「ぅおっ…賢斗。」
毎度のことだが玄関を開けて早々、弟の賢斗が飛びついて来る。
「良い子にしてたか?今日の夕飯なにかわかる?」
賢斗と目線を同じにするために背を屈めながら、夕飯の献立を質問する。
「うん!今日は、オムライスだよ!兄ちゃんそんなにお腹空いてるの?」
まさかのオムライスという返答に、今日の夕飯の献立はあいつらと同じかと少し笑ってしまった。
「そうなんだよ。兄ちゃんすごくお腹すいているんだ。」
「じゃあはやく食べよう!」
賢斗が元気よく俺の手を引いて、手を洗うために洗面台に向かわせる。
「ちゃんと手洗ってからね!」
「そうだな。」
小学生一年生の賢斗とは歳が離れていて、小学五年生の11歳の時に弟ができると知った時はビックリした。
両親は早くに結婚をし、俺を産んだ。なぜ12年も空いたのかは謎すぎたが、母さんも父さんも嬉しそうだったから気にしなかった。
それに、嬉しいのは俺も同じだったし、今はちょっと生意気だが自分とは違って母に似たハキハキしていて明るい賢斗は自慢の弟だ。
手を洗い終わり、リビングの扉を開けて母さんに声をかける。
「ただいま母さん。」
「あらお帰り。」
「兄ちゃんすごくお腹すいてるんだって、はやく食べよう!」
と、わざわざ報告してくれる賢斗。
「珍しいわね。もうちょっと待っててー。」
夕飯ができるまで賢斗とソファーに座りながらテレビを見る。
スープもあるのだろうか、コーンポタージュの香りがし、だんだんと自分の空腹を自覚する。
何分か経ってお皿をテーブルの上にもってくる音がして立ち上がる。
「ほら、賢斗。母さんの手伝いしよう。」
「はーい!」
生意気だが、意外と聞き分けはいいほうだ。
スプーンやフォークをセットし、食事をもって来て食事にありつく。
「いだきます。」
「いだきます!」
「はーいどうぞ。」
お腹が空いていたため、どんどん食事を口に運んでいく。
うん、美味い。
「おいしいね、にぃーちゃん!」
「ああ、美味いな。」
「ふふ、良かったわ。」
あっという間に全てを完食し、風呂に入ってしまおうと皿の片付けを始めた。
「ごちそうさま。風呂入ってくる。」
「はーい。あ、賢斗お口ついてるよ。」
「んんー。」
可愛い会話に少し微笑みながら、リビングを後にしてお風呂に向かう。
「ふぅ…。」
風呂に入る時間は好きだ。
落ち着いて物事を考えられて、今日はこういうことがあったなとか俺にとって振り返りの一日でもある。
そして考える、堀田のことを。なぜか、今、あいつのことをどうにかしないといけない気がする。
中学一年生を除けば、ずっと同じクラスで色々な姿を見てきた。
恋愛的に好きというわけではないと思う。
ただただ、目が離せないのだ。それはきっと俺だけじゃなく、俺の周りの人やあいつの周りの人もそうだ。笑ったり、泣いたり、怒ったり、喜んだりコロコロ表情が変わるのがあいつの魅力だ。それに努力家で真面目、素直すぎる堀田の性格はとても人を惹きつける。
それと、堀田は覚えていないだろうけど、俺にとってあいつは恩人で。
……だからか、堀田だけはずっと俺の中にいる。
「…俺は、どうしたらいんだろ。」
お湯にぶくぶくと顔をつけ、そのまま沈んだ。