パトリツィア・ホテル
「まぁ、御曹司様の方はこの書類のために、あなたと別れる御決心をされましたので、最早、あなたが何を言おうが無駄ですけれどね」

そう言って、クスッと嫌な笑みを浮かべた。

「神澤さん……本当に君が、その書類を?」

勇人が呟くように尋ねたその言葉に、彼女は口を覆って高笑いした。

「えぇ、新宮くん。お話しました通り、私が書類を作り替えて審査の方を通しましたのよ。だって、そうすればあなたは私を選んで下さる……そう、おっしゃいましたからね」

「まさか、そんなことが……」

目を丸くした勇人の口から漏れたその言葉……

私も全く、同意見だった。

泣く子も黙る大型金融機関の神澤ファイナンシャルグループ。

まさか、その融資の審査で、こんな女がする書類の改竄が、そのまま通るだなんて……。

信じられない……
私は思わず勇人と顔を見合わせた、その時だった。

その応接室の扉がギィッと開いて……
一人の女性が、凛とした瞳を神澤さんに向けて口を開いた。
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