パトリツィア・ホテル


〜三日前からの出来事〜



それは……応接室で神澤さんと対面する三日前のこと。

私と朱里は、パトリツィアの過去について洗いざらい調べていた。

過去を調べて、何が知りたかったのかと言うと……
パトリツィアの社長と途中まで人生を共にした女性のことだ。

そう……勇人が以前口にしていた、彼を捨てたという『お母さん』。

彼女は一体、どういう人なのか。

社長の過去を調べると、それが少しずつ、浮かび上がってきた。




「えっ……勇人のお母さんも、庶民だった?」

図書館で見つけた新聞記事に、私は目を見張った。

それに掲載されていた写真の中で微笑んでいたのは、今よりも相当に若い……だがしかし、今と同じくダンディな雰囲気を醸し出している社長。

そして、その隣に写っていたのは……

「可愛い……」

つい、私の口から漏れた。

にっこりと白い歯を見せる彼女は、『社長夫人』という肩書きから想像するようなゴージャスな美女ではなかった。

流れるような黒い髪をした、口元に覗かせる笑窪が実に可愛らしい……純粋で汚れを知らない美少女。

そんな彼女が社長の隣で、満面の笑みを浮かべて左手の薬指に光る指輪を見せていたのだ。
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