パトリツィア・ホテル
「新宮……亜紀(あき)さん」

それが、写真の中で輝くような笑顔を浮かべている、勇人のお母さんの名前。

(やった!)

今まで全然知らなかった……彼のお母さんのことを、少しだけれど知ることができた。

そのことは、パトリツィアが直面している危機を打開する第一歩のような気がして……

そして、何より、自分が今まで知らなかった勇人の秘密を少しだけれど知ることができて、私はとても嬉しかった。




(でも……どうして?)

写真の彼女を見ていると、より一層にその疑問が色濃くなった。

私と勇人がパトリツィアで出会ったあの日。

どうして、彼女は勇人を置いて出て行ったのか。

こんなに幸せそうな彼女に、一体何があったのか……
私は気になって仕方がなかった。




「朱里。一緒に……調べてくれる? この『亜紀さん』って、どんな人なのか」

すると、彼女は片目をニッと瞑ってウィンクした。

「もちろん! ここまできたら、私も気になって仕方がないもん!」

それは、いつも通りの表情だったんだけど……
その時の朱里の悪戯っぽい笑顔はとっても頼もしく思えて。

私は思わず涙ぐんだ。

「朱里……ありがとう!」

すると、彼女は頬を染めつつも、さらに忙しく資料を集め始めた。
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