カタブツ御曹司と懐妊疑惑の初夜~一夜を共にしたら、猛愛本能が目覚めました~
昼間にトイレを借りたときの記憶を呼び起こすが、床にはなにも置かれていなかった。
当然だ、男性のひとり暮らしのトイレにサニタリーボックスなど設置していないだろう。
この部屋のゴミ箱にこっそり捨てるのも、なんとなく嫌だ。
考えてもどうすればいいのかわからず困り果てていたが、こういうときこそ同性の家政婦である近藤さんに頼ればよいのかと思い付き、テーブルの上のベルに目をやった。
思いきって手に取り、カランカランと鳴らしてみる。
するとすぐに扉がノックされ、「お呼びですか?」という声が外から聞こえてきた。
「はい」と返事をする。鍵を掛けていないため、すぐに扉が開かれ、近藤さんは顔を出してこちらを覗いた。
「星野様、なにかございましたか? 私はあと数分で今日の契約時間が終了するため帰宅しなければならないのですが……」
「あ、そうだったんですね。ちょっと質問があって。すぐ済みます」
近藤さんは快く「お聞きします」とうなずき、中へ入ってくる。