カタブツ御曹司と懐妊疑惑の初夜~一夜を共にしたら、猛愛本能が目覚めました~

部長が不在の今日、時短勤務のパートさんたちはすでに帰り、終業時刻を過ぎて三十分の残業を終える頃には俺と星野さんしか残っていなかった。

「……星野さん。もうすぐ終わりますか?」

「はい。もう終わります」

あれから少し佐藤さんたちがしていた噂が気になり、彼女の様子を観察している。

……たしかに、ときどき上の空になって考え事をしたり、無意識なのかお腹を押さえてはさすっている。
一度「具合が悪いんですか?」と声をかけたが、「大丈夫です」と返されてしまった。

「課長、こっちは終わりました。なにかお手伝いすることはありますか?」

彼女の笑顔にドキッとするが、もうときめきだけではない焦りも込み上げている。

「あ、いえ。ないです。どうぞあがってください」

「そうですか? ではすみません、お先に失礼します。明日はお休みをいただきますね」

彼女は自分の席で俺に会釈をした後、今度は荷物を持って俺の席に寄り、再度「お先に失礼します」と声をかけてからオフィスを出ようとする。
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