カタブツ御曹司と懐妊疑惑の初夜~一夜を共にしたら、猛愛本能が目覚めました~
……なんて。気持ちはわかるどころか、実は私は上司である彼に、よからぬ感情を抱いている。
加賀課長。今日も大好きだ。
とにかく、すべてが最高で、なにもかもがツボすぎる。
パートさんたちの行動を嫌がらせだと勘違いして戸惑う姿や、自分の容姿の魅力にまったく気づいていない鈍感なところ。
つり目のクマのぬいぐるみを電話の横に置かれ、そっくりだとささやかれているのにオフィスのしきたりを守ろうとそのままにしているところ。
なんてかわいい男性だろうと仕事中いつも胸が騒がしく、心の中では常に好き好きビームを送っている。
お姉様にビシバシしごかれてきた私の唯一の癒やしであり、本当なら、私も彼女たちみたいに彼に気軽に話しかけたり、体に触ってみたり、名前で呼んでみたいと思うこともある。
でも私はーー。
「星野さん。半期の会計のとりまとめについてもう一度教えてもらってもいいですか」
パートさんたちから逃れてきた加賀課長は、乱れたスーツを直しながら私の席へやって来た。