カタブツ御曹司と懐妊疑惑の初夜~一夜を共にしたら、猛愛本能が目覚めました~
加賀隼世課長、二十七歳。
半年前に総務部へやって来た御曹司。
花形部署にいた彼がなぜここに来たのかは社員だけに明かされており、女性の扱いが得意ではなくこの女の園で修行中なのだと私も聞いた。
女性が苦手だというのは、彼を見ていればわかる。だってーー。
「きゃー! 隼世課長ったら腕の筋肉すごぉい。触らせて触らせて」
「ちょっと、仕事中なので……!」
いつもこんな感じなのだ。
毎日、ああしてパートさんたちに揉みくちゃにされてはタジタジになっている。
彼は自分がセクハラをしていないかにはかなり慎重になっているのに、自分がセクハラをされていることはまったく気づいていない。
あのルックスを、ここの女性たちが放っておくわけないじゃない。
イケメン俳優並みの整った顔立ちに、スーツの上からでもひと目でわかる鍛え抜かれた体つき。
元剣道部というのも納得のスポーツマンシップを感じる黒髪や言葉遣い。それでいて寡黙で不器用な性格。
当然、彼はここへ配属されてきたときから大人気だった。
皆、彼が女性に弱いとわかると好き放題にちょっかいをかけ、困らせて楽しんでいる。
毎日イケメンバーゲンセールが行われていると言っていい。
たしかに無愛想な彼が焦る反応がかわいくて、いじめたくなる気持ちはわかるけど。