カタブツ御曹司と懐妊疑惑の初夜~一夜を共にしたら、猛愛本能が目覚めました~

目の前ですぐにPCでデータを送り「送りましたよ」と声をかける。
ついでに、そばにあった彼のワイシャツの腕をチョンチョンとつついて耳打ちした。

「今夜の総務部の飲み会、課長は部長と私の間に座ってください。席とっておきますから」

「えっ、本当に……? いいんですか?」

渡りに船、という表情を向けられ、キュンとする。

「はい。パートさんたちに捕まっちゃうと大変でしょうから」

最後に「ね」と念押しすると、彼は「星野さん……」とつぶやき、こちらは照れくさくなって目を逸らす。

いつもこうして、なんだかんだと手助けしてしまう。

彼はここへは試練としてやって来ているのだから放っておくべきなのかもしれないけど、一生懸命な課長が八方塞がりになっているのを黙って見ていられない。
本人はとても真面目に悩んでいるんだもの。

「ありがとうございます星野さん。いつも助かります」

「いいえ」

仏頂面のような顔でも、真摯な感謝の気持ちが伝わってくる。

やっぱり加賀課長って、いいなぁ。

まっすぐな彼を見ていると私の不安な気持ちも微かに和らいでいる気がする。こんな人とお付き合いできたら、幸せだろうな。

……なんて、イケメン御曹司の彼と平凡な私では釣り合ってなさすぎるから、夢のまた夢なんだけど。
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