カタブツ御曹司と懐妊疑惑の初夜~一夜を共にしたら、猛愛本能が目覚めました~
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その日の業務の後、貸しきりの居酒屋へと移動した。半年に一度開催される総務部の飲み会である。
会場は女性ウケを狙い、チーズを使った料理が美味しいと噂のバル。
コース料理にはピザやチーズとお肉の盛り合わせがあり、ノンアルコールドリンクも豊富だと喜ばれるだろうという私のチョイスは間違っていなかったようだ。
「すっごく素敵なところじゃない! 星野さん、さすがねー。若い子は違うわぁ」
若くても誰ともこんなところ来ませんけどね、と私は心の中で自分を皮肉る。
今までお子さんがいるパートさんはこの飲み会に滅多に参加していなかったのに、加賀課長が来てからは出席率はほぼ百パーセントになった。
モザイクランプでムーディーに照らされる店内のテーブル席は、大はしゃぎの女性たちで埋め尽くされて圧巻だ。
私は約束通り、自然に課長の隣を陣取った。
「乾杯!」
部長の号令でさっそく課長とグラスをぶつけ、私はノンアルコールのレモネードを飲みながらチラチラと周囲を気にする。
料理やお酒が行き渡っているかの確認と、パートさんたちが課長のもとへ流れてこないか見張っているのだ。