カタブツ御曹司と懐妊疑惑の初夜~一夜を共にしたら、猛愛本能が目覚めました~
とは言え、課長はさすが体育会系と言うべきか、お酒にはかなり強いので心配はない。
部長のいるこちらのテーブルで社員同士まったりと飲みながら、しばらく時間の流れに身を任せる。
カナッペ、ピザ、チーズと次々に運ばれてくる料理を取り分けながら談笑し、なかなか課長が戻らないことにふと気づく。
連行されたテーブルを振り返るとーー。
「やーだ隼世課長ぉ? 大丈夫ですかぁ?」
「酔った課長カワイイー!」
なんと課長はテーブルに突っ伏しており、四方からベタベタと背中をなでられていた。
彼の前のテーブルには、飲まされた残骸と思わしき細長いグラスがずらりと並んでいる。
ギョッとしてイスから腰が浮いた。
「か、課長……」
さすがにまずいと思い、私はやっと席を移動して助けに入った。
彼は顔をこちらへ向け、据りきった目で「星野さん……?」とつぶやく。
背中をさすろうと手を置くと、なぜか女性陣から「キャー!」と黄色い歓声が上がる。
「え……?」
「来た来た、待ってたよ星野さん。よかったね隼世課長! 奥さん来たよ!」
え? 奥さん?
あまりにも身に覚えのないキーワードを耳にし、思わず手を引っ込める。
課長に甘えていたはずのさっきまでと打って変わり、パートさんたちは私をヒューヒューともてはやし始めた。