カタブツ御曹司と懐妊疑惑の初夜~一夜を共にしたら、猛愛本能が目覚めました~
三十分後、課長からアパートに到着したとメッセージが来た。
窓からエントランスを見て驚いた。黒い高級車が横付けされている。
私は急いで荷物を持って降り、ちょうど車から降りてきた課長に「わざわざすみません」と挨拶をする。
いつもスーツ姿の課長しか見たことがなかったが、今日は黒のカシミヤのセーターにグレーのボトムスを履いている。
どちらもシンプルだが上質、それにサイズが合いすぎていて、オーダーメイドなのではとよぎった。
仕事中の課長はブランド物のスーツを着ているわけではない。もしかして、修行中の総務部課長としての姿と、御曹司としての彼は違うのかも。
早くもギャップにやられている私は、彼の前でボーッと突っ立っていた。
「星野さん、転んだら大変ですから走らないでください。重いものは俺が持ちますから。さあ、乗って」
キャリーバッグを奪われ、流れるように助手席へ座らせられた。
荷物をトランクに入れてから運転席へ戻った彼は、「使ってください」と私にアーガイル柄のブランケットを差し出す。