身代わり依頼は死人 桜門へ ~死人の終わらない恋~




 ツボミは突然頭を優しく撫でられた事に驚き、きょとんとした顔で白銀を見つめた。
 次の言葉を、指示を待っているのだろう。


 「同じだ」
 「白銀、何が同じなんですか?」
 「俺もツボミと話せなくなると苦しくなる。悲しいんだ」
 「これは、悲しいという気持ち」
 「あぁ。そうだよ。それが寂しい、悲しいという気持ち。苦しいだろう?」
 「どうですね。どこもエラーにもなっていないですし、人間のように傷や病気にはならないので痛覚など持ち合わせてないのですが。これが痛いという感覚ですか」


 ツボミは、きょろきょろと自分の体を見て不思議そうな表情になる。
 苦しい、痛いという感覚なのに、少し笑みさえ見せていた。初めての感覚が嬉しいのだろう。


 「俺はどんなに最新のドールが出来たとしてもツボミを手放す事はないよ。ツボミは俺にとって唯一無二の大切な存在なんだ。ツボミと話す事が、とても楽しい。一緒にドールを作るのが、楽しい。過ごす時間が大切で愛おしいんだ。だから、心配なんてしなくていい。君を手放すことはないよ」
 「同じです」
 「同じ?」
 「私も白銀と同じです。同じは、嬉しいですね」


 安心した、穏やかなツボミの笑み。
 それを見て、白銀はある決意が湧き出てきた。
 「ツボミは自分が守る。一生大切にしよう」と。


 「あぁ。嬉しいな……」


 白銀は泣きそうなぐらい幸せを感じ、ツボミと同じぐらい満足した笑顔になったのだった。




 
< 129 / 200 >

この作品をシェア

pagetop