身代わり依頼は死人 桜門へ ~死人の終わらない恋~
ドクンッと胸が、大きく鼓動する。
自分の胸の音で体がゆらゆらと揺れそうになる。それぐらい衝撃のある言葉だった。
最後?それはどういう意味なのか。
頭では理解しているはずなのに、わからないのは何故なのか。それは、わかりたくないからなのだ。と、子どもながらに海里は感じていた。
遠くから、コンコンッと辛そうな初芽の咳が聞こえてくる。これが彼女の日常の姿なのだ。
「海里が来てくれると、何故が初芽の容態は良くなっているようだが……。日に日に体の調子は悪くなっている。食事が食べられないのもそのせいなんだよ」
「………初芽は……」
「…………」
「初芽は、死なないでしょ………?」
海里は恐る恐る、その言葉を出した。
聞いてしまえば、知ることになってしまう。
けれど、知らないといけないと思ったのだ。
すると、その言葉を耳にした初芽の父親の瞳が揺れた。
聞くのが怖い。耳を塞ぎたい。
けれど、残酷な言葉はすぐに帰ってきた。
「………あと半年ももたないそうだ………」
どんなに酷い言葉を言われてきた。
「災いものは出ていけ」「ばけもの!」「どっかで死んでしまえ」……そんな言葉を言われ続けてきた。
そのどの言葉よりも、弱々しく囁くように告げられた言葉が、海里の胸を深く傷つけてきたのだった。