身代わり依頼は死人 桜門へ ~死人の終わらない恋~
目をギュッと閉じて、現実から目を逸らした。けれど、それで現実が変わるわけでもない。
頭の中では、もうわかってしまっているのだから。初芽が死んでしまうという事が。
海里は屋敷に入り、何も言わずに咳が聞こえ続けてくる部屋の襖を開けた。
すると、布団の上に座り込み咳に必死に耐え、涙目になっている初芽が突然開いた襖に視線を向けてきた。そして、その目は大きく開かれ、驚いた表情に変化をした。
「か、海里」
何とか名前を呼んだが、まだ咳が止まらないのだろう。いつもの優しい笑みはなく、ただただ咳に苦しんでいた。
海里はすぐに彼女に近づき、背中をさすった。
近くに置いてあった水を、彼女に口元に持っていき、ゆっくりと飲ませる。それを繰り返していくうちに初芽は少しずつ落ち着いていった。
ゆっくりと体を布団に横にさせ、頭を少し高くさせて彼女を寝かせる。けれど、彼女は眠るつもりなどないようで、すぐに声を出した。
「………今日はどうしたの?いつもの時間でもないのに」
「………ごめん」
「ううん。いいの。いつでも来てもらってもいいんだけど。体調悪いとこんな感じだから。なんか、かっこ悪いところ見せちゃったなーって」
「………」