政略夫婦の授かり初夜~冷徹御曹司は妻を過保護に愛で倒す~
『愛のない政略結婚に戸惑う日々』
 結婚したって愛されることも、幸せになることもないと思っていた。
 ただ、苗字と生活する場所が変わるだけ。そう、思っていたのに……。

 薄暗い部屋の中、響くのはお互いの乱れた呼吸と、耳を塞ぎたくなるような自分の甘い声。
 ううん、声だけじゃない。今の私の顔、絶対恥ずかしいことになっている。

 腕で顔を覆って隠そうとしたけれど、その手を彼に掴まれた。

「顔を隠すな」

「無理です。だって私、変な顔してますっ……!」

「変じゃない。……だから可愛い顔、ちゃんと見せて」

 指を絡めて握り、甘いキスが落とされる。

 樋口(ひぐち)未来(みらい)から西連地(さいれんじ)未来になって三ヵ月あまり。新しい生活は驚きと戸惑いの連続だった。

 それはすべて彼――、西連地弦(ゆずる)のせい。

「未来、掴まって」

 息も絶え絶えの私は、言われた通り弦さんの首に腕を回すと、彼は繋がったまま私を抱きかかえて起き上がった。そして私の顔をジッと覗き込む。

 やだ、この体勢すごく恥ずかしい。

 身長一五五センチしかない私は、一八五センチと長身の弦さんをいつも見上げていた。それが今は同じ目線。ううん、少し私のほうが上だ。

 恥ずかしいのに切れ長の綺麗な瞳に見つめられると、なぜか逸らせなくなる。

 ただ見つめ返すことしかできずにいると、大きく下から突き上げられ必死に彼にしがみついた。
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