同期の御曹司様は浮気がお嫌い

もしかしたら書斎で寝ていたりしないだろうかと部屋を覗いてみても虚しくなっただけだ。
私が掃除したっきり散らかることがなくなった部屋に入る。本棚には慶太さんが残していった小説や仕事の参考書、資格の本が並び、古いビジネス雑誌もある。優磨くんが追加したのだろうマンガが置いてあって、手に取ると棚の端に封筒が置かれているのが目に入った。

封筒を取り中を見ると台紙が入っている。優磨くんのことが何かわかるかもしれないと、いけないと思いつつも台紙を取り出した。薄いピンクの台紙を開くと、驚いて思わず床に落としてしまった。
それは明らかにお見合い写真だった。着物を着た女性が床から私を見上げているようだ。

これ……もしかして優磨くんの婚約者?

美麗さんが言っていた。城藤はほぼ全員政略結婚だと。私の知らないところでこっそり写真を受け取っていたのだろう。

お相手は品のある美人だ。
私から隠すように置かれているということは、この人と結婚する気はなかったと思ってもいいかな? でも私に裏切られたと勘違いして自分も婚約の話を進めていたらどうしよう……。だってこの人の方が会社に貢献できるお父様の認めた方なのだから。





私だけが住んでいる部屋を必要以上に掃除して時間を潰した。ここは優磨くんの家なのだから汚くしてはいけない。例え家主がいつ帰ってくるかわからないとしても。
私はここに居ていいのだろうか。優磨くんが帰ってこない以上出て行った方がいいのではと思い始めていた。

不安で毎晩眠りが浅くなっていて、僅かな音でも目を覚ましてしまった。
ドアが開く音に体を起こした。もしかしたら優磨くんが帰ってきたのかもしれないと期待してベッドから下りる。

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