同期の御曹司様は浮気がお嫌い

リビングの明かりがついてドアの隙間から光が漏れる。緊張しながら寝室のドアを開けるとソファーにカバンを置いた優磨くんと目が合った。

「お、おかえりなさい……」

私の声は掠れた。久しぶりに見た優磨くんの顔は疲れている。

「……いたんだ」

この言葉に胸が痛んだ。やっぱり優磨くんはもう私がここに居ることを良くは思っていないのだ。

「下田のところに行ったのかと思ってた」

「行かないよ……とっくに別れてるんだし……」

「へー……どうだか……」

冷たい言葉に泣きそうになるのを堪える。

「LINE読んでくれてない?」

「言い訳は聞きたくなくて見てない」

「はなっ……話しを聞いてほしい……」

堪らず声が震える。

「着替え取りに来ただけだからすぐに出る」

「今どこにいるの? ご実家? ホテル?」

「…………」

質問には答えずクローゼットに行ってしまう。しばらくしてキャリーケースを持って出てきた。

「この部屋は波瑠の好きにして。ここなら満足でしょ?」

「あの……優磨くんも帰ってくるよね?」

「俺は出て行く」

「え!? どうして?」

「波瑠と生活したこの部屋にいるのは辛い。波瑠がここに残ろうと出て行こうと、この部屋にはいたくない。俺が浮気を許せないの知ってるでしょ」

「浮気じゃない! 話も聞いてくれないの?」

私の目を見てくれない。いくら違うと言っても聞いてもらえない。

優磨くんはリビングにキャリーケースを置いたままキッチンに向かい、冷蔵庫を開けた。いつ帰ってきてもいいように冷蔵庫の中に優磨くんの好きなものを買って入れておいた。けれど無表情の優磨くんは何も言わず缶ビールを出して飲み始める。

「あのね、下田くんにおど……」

「聞きたくない」

優磨くんは言葉を遮る。私の目からついに涙が零れ落ちた。

< 116 / 162 >

この作品をシェア

pagetop