同期の御曹司様は浮気がお嫌い

「うん、大丈夫。今日はそんなにたくさん買わないつもりだし」

「もし足りなかったらカードで払って。財布そのまま預けるから」

「え?」

クレジットカードが何枚も入っている財布を預けられて恐縮する。

「優磨くんお財布持たないで行くの?」

カバンに書類を詰め込む優磨くんの後ろから話しかける。

「今日はスマホ決済で何とかするから大丈夫。波瑠はそれ使って」

私がこの財布を持つことが怖くなる。絶対に落とさないようにしないと。

「今日は頑張って早く帰るから一緒にご飯食べよう」

「でも無理しないでね。優磨くんのペースでいいから」

私の言葉に優磨くんは微笑む。いつも笑顔を向けてくれるから安心して甘えたくなってしまう。

「悪いけど今日は先に出るね。送っていけなくてごめん」

「気にしないで。いってらっしゃい」

優磨くんを送り出すと私も出勤の準備をする。ここのところ体調が良い。退職を決めたから回復するなんて自分の体は分かりやすい。
退職日まであと少しだし、頑張ろう。

優磨くんの財布を入れたカバンを肌身離さず持ち歩き、帰りもいつも以上に気を張って移動した。
こんなにカードが入っているのだから万が一落としたり盗まれたりしたら大変だ。財布自体もブランドの上等なものだし。

スーパーに寄ると週末の献立に迷ってしまう。私が作るものは何でもおいしいと言ってくれるから結局私が食べたいものを作ってしまうけれど、優磨くんの好きなものを中心にしたい。
あれもこれもと考えているとカートが食材でいっぱいになる。

怒られるかな? 無駄遣いするなって言われたらどうしよう。でも作ってあげたい料理だし……。

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