同期の御曹司様は浮気がお嫌い
結局現金では足りなくてカードで支払うことになってしまった。
今夜はカレーにしよう。明日からの休みはちょっと気合い入れて作ろうっと。優磨くん喜んでくれるといいけど。
歩きでは辛いほどの大きさになったビニール袋を持ちながらマンションに帰って、一人暮らしには大きすぎる冷蔵庫に食材をしまっていく。
この冷蔵庫も他の家具家電も一人暮らしにしては大きいな。さすが財閥の御曹司……ああでも、優磨くんはきっとそう思われるのが嫌いなんだよね。城藤の名前を出されることを嫌がっているようだから。入社したばかりの時も『城藤』とは呼ばずに下の名前で呼んでくれってお願いされたっけ。みんな優磨って呼ぶのに優磨くんはみんなのことを苗字でしか呼んでないな。今思うと人と距離取ってたのかな。
野菜を切って煮込んでいる途中で玄関のドアが開く音がした。それなのに優磨くんはリビングに顔を出さない。不思議に思って玄関に行くと収納棚の扉に付けられた鏡をじっと見ている。
「おかえり、どうしたの?」
「ただいまー……ねえ、ネクタイにシミついてる?」
「え?」
優磨くんは私に向けてネクタイを見せるから顔を近づけた。
「うーん……これかな? 黄色いのが点々と……どうしたの?」
「お昼にカレーうどん食べたら飛んじゃって……他には? シャツには飛んでない?」
優磨くんの胸元を見るけれど他は大丈夫そうだ。
お昼がカレーうどんということは、夜もカレーじゃダメじゃん。
「夕飯カレーなんだけ……」
言いながら顔を上げると至近距離に優磨くんの顔がある。見つめ合ってしまい、私は勢いよく顔を逸らした。