同期の御曹司様は浮気がお嫌い
「ん!」
離れようとすると頭の後ろに手を当てて抑えられ逃げられない。
徐々に目が潤んでくる。逃げられないのに優磨くんのキスは触れるだけの優しいキスだった。唇を軽く啄まれてもそれ以上は強く来ない。まるで怯えているようだ。
「いや……」
唇がわずかに離れた瞬間に言葉で抵抗した。すると優磨くんの手がピクリと震え、唇が離れる。
「優磨くん……」
名前を呼ぶと焦って私の体を解放する。
「今のは忘れて……」
「え?」
「波瑠は俺のこと全然意識してないのにごめん……」
苦しそうに声を出すと優磨くんは私の横を抜け書斎に入ってしまった。
「待って! 優磨くん!」
ドアの外から優磨くんを呼んでも返事がない。
「優磨くん……」
部屋の向こうからは気配が感じられない。涙を堪えてドアから離れた。
忘れてって言われても忘れられるわけがない。
指で唇を撫でる。強引なのに優しいキスをされたら、嫌でも意識してしまう。
弱っている私を支えてくれたら惹かれないわけがない。意識しちゃダメなのに、好きだって気持ちは日々大きくなっていた。
それなのに忘れてなんて、まるであれは気の迷いみたいじゃないか。
言われた通り忘れよう。そうしたらもう傷つくことはないのだから。
◇◇◇◇◇
いつもより早く起きて優磨くんの朝食の準備をする。
ラップをかけて温めるだけでいいようにキッチンのカウンターに置いておく。
髪をまとめてスーツに着替える。リクルートスーツを着るのは4年ぶりだけど、体のサイズが変わっていなくてほっとする。