リアル彼氏
焦ってうまい言い訳も見つからない。


どうしよう……。


そう思った時だった。


隣りの席の女子生徒が雑誌を取り出したのが見えた。


それは地元のイベント情報が乗った雑誌で、表紙に《城跡のプロジェクションマッピング!》と書かれている。


咄嗟に口が開いていた。


「プ、プロジェクションマッピングだよ!」


「プロジェクションマッピング」


まだ眉を寄せているマリナが聞く。


あたしは何度も頷いた。


「そ、そうだよ! 映像だったの!」


苦しい嘘だった。


マリナはまだいぶかしげな表情を浮かべている。


本物の花火だろうが、プロジェクションマッピングだろうが、もっと集客が見込まれる大型連休などでやるならまだわかる。


今は梅雨入り前の6月。


微妙な時期だった。
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