副社長が私を抱く理由~愛と殺意の先に~
初めて会った日…。
社長室で新しく入った秘書だと、空斗から紹介された日だった。
あの日。
宇宙は涼花を一目見て、風香だと感じた。
ずっと風香の後ろに見えていた女性と同じで。
でも違う名前を名乗っている事から、どうしてだろうと思うだけで。
それでも傍にいれば理由が判ると思い、社長と兼任で秘書をお願いして。
偶然を装い、涼花を助けるような形をとり、半ば強制的にセフレにして…。
ずっと傍にいて欲しくて、ちゃんと本当の事を話した。
グッと気持ちが込みあがってきた宇宙…。
「ちょっと…すみません…」
そう言って、席を立った…。
そのままリビングを出て行った宇宙…。
涼花はちょっと心配そうな目で見ていた。
「傍に行ってあげたら? 」
「え? 」
「きっと彼、泣いているんじゃないかな? とっても優しい人だから、涼花の辛さも全部受けちゃってるよ」
そんな…。
私のせい?
そう思った涼花は、宇宙の後を追った。
宇宙はそのまま自分の部屋に行った。
ドアにもたれて天井を見上げると、スッと宇宙の頬に涙が伝ってきて…。
「ごめん…風香。俺が…もっと強ければ、こんなにも傷つけることはなかった…」
いろんな思いが込みあがってきて。
宇宙はずっとこらえていた想いが込みあがってきた。
泣いてはいけない…そう思っても、後から溢れてくる涙が止まらない…。
コンコン。
ノックの音にハッとなった宇宙は涙を拭いた。
「…宇宙さん…」
涼花の声に、宇宙はそっとドアを開けた。
ドアの向こうには、心配そうな目をした涼花が立っていた。
「…ごめん、話の途中で…」
「いいえ。…謝るのは私です…。勝手に誤解してしまって…」
「あの状況じゃ、仕方ない。俺が、あんたの立場だったらきっと同じ事思っていたから」
「…貴方と初めて社長室で会った時。分からない気持ちが込みあがってきて、どうしたらいいのか分からなくて…。何も記憶が曖昧で、なんでこんな気持ちなるのか分からないから…。ただ、父と母の敵を討たなくてはとそれだけ思って気持ちを保つ事しかできなかったのです」
「そうだったのか…。でも、よく来てくれたな。俺の下に…」
「はい…。きっと、どこか…」
言いかけた涼花が、気分が悪そうに表情を歪めた…。