エチュード〜さよなら、青い鳥〜

嵐の前触れ


その日は、『アリオン』の営業企画部の交流会だった。営業企画課、営業一課、営業ニ課と部内それぞれの課、普段同じフロアで仕事している仲間の親睦を図るという名目で定期的に行われている飲み会だ。

今回、話の中心はもっぱらアリオン・エンタープライズに出向していった四辻涼のことだった。

「いやぁ、四辻にはマジでやられたなぁ。出向決まった時、飛ばされたって思ったんだけどなぁ」
「俺も、俺も!真面目すぎて煙たがられたんだって。それが、まさかの大逆転。社長令嬢と結婚だもんなぁ、ビックリだよ」

そんな話で盛り上がっているテーブルの一番端。会話に加わるわけでもなく、一人暗く俯いていたのは、先月秘書課から営業ニ課に異動になった福岡陽菜だった。

「陽菜、飲んでる?」

そんな陽菜に話しかけてきたのは、同じく営業ニ課の朝倉だ。

「うん。大丈夫。まだ、雰囲気に慣れなくて」
「多少酔っても大丈夫だよ。ちゃんと連れて帰るから」

同期の朝倉とは一緒に暮らしているが、噂になるのが嫌で付き合いをオープンにしていない。まさか、今回の異動で同じ部署となるとは、陽菜にも想定外だった。


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