エチュード〜さよなら、青い鳥〜
「私は、人事担当の四辻涼と申します」


「やっぱり、四辻さん!
でも、あの時頂いた名刺、『アリオン』の営業企画部でしたよね?」


「…これは、採用の為の面接です。私語は慎んでください。
では、始めます。
あなたが、当社を希望する理由をお聞かせ下さい」

記憶をたぐり首を傾げる初音に、四辻は冷たくピシャリと言い放つ。四辻からは、再会の驚きなど微塵も感じない。淡々と面接が始まった。


「え、あ、はい。
音楽は世界共通。感動したり、癒されたりする気持ちは言語や文化の違いを飛び越えます。父はそんな最高の音楽を多くの人に聴いてもらいたいと、この会社を経営しています。
自分には何ができるかわかりませんが、そのお手伝いがしたいと考えています」


聞かれると思って、用意しておいた答えだった。


「自分には何ができるかわからない?」


メガネの奥の切れ長の目が、初音を真っ直ぐに見つめている。
ともすれば睨まれているかのような、鋭さだ。
今の答えが気に入らなかったのだろう。



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