エチュード〜さよなら、青い鳥〜
リサイタル当日。
本番同様の通しリハーサルを行うため、衣装をチェックしていた。
「ハツネ、ドレスは?」
「もうすぐ届きます」
初音は時計を見る。約束していた時間が過ぎているが、ジュンにお願いしていたドレスはまだ届かない。電話しようかと思っていると。
「こんにちは〜お待たせ」
控え室をノックしてジュンが入ってきた。
「ジュンさん!ジュンさん直々に持ってきてくれたの!?てっきりスタッフの誰かだと」
「ドレスの微調整しなくちゃならないでしょ?久しぶりね、初音!この子が涼音ね?いやぁん、可愛い!!」
涼音は抱っこ紐で初音とピッタリくっついてご機嫌だ。ジュンに頬をチョンとつつかれると、嬉しそうに手足をばたつかせた。
「ディアナもこんな感じだったわね〜それが…」
ジュンはそこで一度言葉を区切り、初音の隣にいたクラウゼ教授に英語で話しかけた。
「ずいぶんと老けたわねー、ディアナ」
「ジュン!久しぶり!またあなたに会えるなんて!」
どうも知り合いのようだ。クラウゼ教授はひどく再会を喜んでいる。
「おや、ジュン。まだ生きてたのかい」
そこへマーシャが声をかけた。
「あら、マーシャ。元気そうじゃない。あなたもずいぶんとバアさんになっちゃって。まるで魔女みたい」
「それはお互い様よ、ジュン。あんたも元気そうだ」
「ジュンさん、二人を知ってるの?」
「あぁ、マーシャが若い時から衣装をデザインしてたから。ディアナのことは生まれた時から知ってるわ。
さて、まずは着てみて」
サッとジュンの顔が変わる。プロの顔だ。