エチュード〜さよなら、青い鳥〜
「涼クンもね、丹下の一族に入って楽が出来る、くらいのノリを持ち合わせていれば違ったんだろうけど。
あんなに真面目だと、そのうち男として理想とか気負いみたいなものに飲み込まれて、丹下から逃れたくなってしまうんじゃないかと思ってたの。心配してたとおりになっちゃって」

「ジュンさん、そこまで読んでたの?
さすがだね。年の功ってやつ?」

「そうねー。ダテに長くは生きてないわ。案外、今日も来てるんじゃない?」

「…かも知れないけど。もう終わったこと。いつまでも引きずっていても先に進めないから」

「確かに。
マーシャもね、色んな経験をしたから今の場所に辿り着けたの。
初音、ピアニストにとって経験は栄養よ。覚えた感情を音に乗せれば、初音だけの音になる。
それに、コブ付きだってアンタはいい女よ。誰より強くて、誇り高い子よ。自信もって胸を張りなさい」


ジュンの言葉は、初音を強くする魔法の言葉だ。

初音は笑顔で大きくうなづいた。










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