エチュード〜さよなら、青い鳥〜

最高の時間



ーーなんて、弾きやすいんだろう。

今まで、ピアノ協奏曲は何度も弾いたが、これほどに弾きやすいのは初めてだ。初音の欲しいタイミングでオーケストラから絶妙な音がくる。


ーーこれが、音楽の神様と呼ばれるヘンリー・クラウスの指揮なんだ。
楽しい。楽しすぎる。


初音は、夢中でピアノを弾いた。終わるのが惜しい。いつまでも彼の指揮で、プロコフィエフの世界に浸っていたいと心の底から思うほど、楽しい時間だった。


演奏を終え、会場が拍手の渦でいっぱいになる。
初音はピアノから立ち上がって、ヘンリーと握手をした。

「ブラボー、ハツネ。最高だ!キミは素晴らしいピアニストだよ」

「こちらこそ最高の時間をありがとうございました」

ヘンリーが嬉しそうにニッコリ微笑めば、やはり、どこかクラウゼ教授に似ている気がした。



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