エチュード〜さよなら、青い鳥〜
青い鳥
12月。日本。


ーー注目の若手音楽家による
クリスマスコンサート
スペシャルゲスト 四辻初音
ピアノの神さま、マーシャ・アルジェリーナの魂を引き継いで、今、日本に凱旋ーー


ホテル 、オフィス、商業施設、ホールなどを擁した大規模複合施設。そのホール入り口に、初音の顔写真が大きく入ったポスターが貼られていた。ここで二日間、コンサートが行われる。今日はその初日だ。


結婚前に、二人でデートで訪れたホール。そこで演奏すると思うと、なんだか感慨深い。
涼は初音のマネージャーとして、会場のスタッフとの打ち合わせを終え、初音の元へ向かった。


すると、初音が満面の笑顔で、親しげに男と話をしている。

男の顔に見覚えがある。あれは、同級生だった竹本大輔だ。
慌てて、今日の出演者リストを確認する。ソプラノ歌手の伴奏者として、小さく名前があった。


ーーずいぶん、嬉しそうじゃないか?


あんな笑顔を見たのは久しぶりだ。

不慣れなマネージャーの仕事は初音に迷惑かけないようにすることで精一杯。涼音とはだいぶ距離を縮めてはいるが、初音との距離は変わらない。彼女がいつか心許してくれるまで、決して強引に彼女の愛を求めることはしない。そばにいられるだけで、毎日感謝する日々だ。
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