エチュード〜さよなら、青い鳥〜
「マジか⁈」


その時、不意に四辻の背後にいた男が声を上げた。
隣に見覚えのある女の子がいる。
名前は思い出せないが、以前ショパンの日に一番最初に『革命のエチュード』を弾いてくれた女の子だ。


「それ、俺もエントリーしてるんだ。留学する前の最後の舞台としてさ」
「やっぱり?そうじゃないかと思った。
今日、先生に初音も申し込んだって聞いてさ。びっくりしたわよ」
「このコンクールは、協賛企業の筆頭がアリオンだ。なんだよもう、アイツに決まりじゃん。俺、出るのやめようかな」
「梅田はいいよ、留学決まってるんだし。
あのコンクール、グランプリになれば奨学金付きで短期留学出来るチャンスができるじゃない?私さ、大学院行くつもりだけど、援助してもらえるならやっぱり留学したいから。
もう、嫌になる。全く、お嬢様の気まぐれってやつは、参るわ」






< 41 / 324 >

この作品をシェア

pagetop