エチュード〜さよなら、青い鳥〜
仕事を早めに切り上げ、四辻が“ソレアード”に到着したのは、18時少し前だった。


すでに、ベートーヴェンの夜は始まっていた。
バイオリンとピアノの調べがしっとりと店内に流れている。
四辻は、いつものカウンター席についた。

「あ、四辻さん。今日は早いですね。まずはビールにしますか?」

顔馴染みのバーテンダーが声をかけてきた。

「あ、うん。ドイツビールで頼むよ」

ベートーヴェンは、ドイツ出身。気分を上げる為に飲み物にもこだわりたかった。


四辻は店内を見渡す。初音の姿はない。まだのようだ。


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