エチュード〜さよなら、青い鳥〜

革命のエチュード

「あ、大輔!初音!」

大輔と共にミュージックバー“ソレアード”に着くと、数少ない女友達の高松萌(たかまつもえ)が手を上げて呼んでくれた。
他にも数人、顔見知りがいる。

「もうすぐ始まるよ〜。私、飛び入りする気満々だから!」

同じピアノ科の萌は、ショパンが得意だ。卒業したら、大学院に行きたいと言っている。




楽しいひと時だった。ショパン好きが、ジャズ風やロック風にアレンジした曲を奏でる。飛び入りで参加する者あり、手拍子する者ありで盛り上がった。


「萌、すごい!ジャズ風、カッコいい!」

「ありがと、初音。初音もどう?」

額に浮かぶ汗を拭いながら、萌はビールをあおる。
初音が人前で滅多に演奏しないことを知っていて、わざと声をかけているのだ。

「私は萌みたいに上手くないから。アレンジとか、無理。聴いてる方が楽しいよ」

初音の答えは、いつも一緒。
上手いと言えば、萌は満足してそれ以上は言ってこないことをわかっている。案の定、萌はニッコリ笑って他の友人らと音楽談義をはじめた。


初音は、ピアノに目をやる。30代くらいの女性が、エチュード10-12『革命』をやはりジャズ風アレンジで弾いていた。


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