エチュード〜さよなら、青い鳥〜
ーーこのアレンジは凝りすぎだな。

そんなことを思っていると。




「どなたか、『革命』をピアノだけで、オリジナルで弾いてもらえませんか?」



カウンターに一人でいたスーツ姿の男性が、手を上げてリクエストをした。
店内がざわつく。ここでのリクエストは珍しくない。今日は『ショパンの日』。ピアノのリクエストは想定内だ。誰が手を挙げるか、互いに牽制しあっている。




「あたし、行こっかなぁ」

そんな中、萌が手を挙げる。
萌はコンクールでの実績もあり、現役音大生の中でも知名度が高い。高松萌が行くならと、店内のざわつきは収まりを見せた。


最初の右手の和音の強打。左手の16分音符の速い動きで始まる激しい序奏。
萌は酔っているせいか、ミスタッチがポロポロとある。それでも、最後まで弾ききった。


「あー、ダメだ。イケると思ったんだけどなぁ。久しぶりすぎた」
落ち込みながら萌が戻ってくる。

萌の後、別の男性がこの曲はこうだ!と言わんばかりに『革命のエチュード』を弾いている。同じ曲でも全く別。こちらはとてもダイナミックだ。



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