エチュード〜さよなら、青い鳥〜

過去

ーーごめん、涼。無理みたい。あなたとこれからもずっと一緒に生きていく未来が見えない。


アリオン・エンタープライズに出向することをなかなか決断出来なかったのは、当時恋人だった陽菜にも一因があった。



アリオンの営業企画課でエリートコースまっしぐらだった四辻。秘書課の陽菜とは、友人の紹介で知り合った。
一年付き合って、そろそろ結婚と匂わせたのは陽菜からだった。

秘書課は女の戦場だからと、身につけるものは一流品ばかり。エステにネイルに美容院にと、自分磨きに余念がなかった陽菜。
周囲からは、あんなに綺麗な女性が彼女だなんて羨ましいと言われたものだ。

四辻は彼女の外見の美しさには興味がなかった。
彼女は四辻が好きなクラッシック音楽の話を黙って聞いてくれた。その優しさが好きだった。

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