だから私は、今日も猫を被る。

06.あお先輩の正体



あお先輩と会う約束をした当日。

私は一日中そわそわしてしまってた。
二人に何かあったの、と尋ねられたけど、どうせ誰かと会うと言ったら色恋的な意味で捉えるだろうからと、何も言わなかった。


「うあー、緊張する……」


どんな人なんだろう。
宮原先生が現れたらそれはそれで驚くけれど、気心知れているから安心ではあるかも。

カフェの前までやって来るが、なかなか入れずにいた。
お店の前でうろうろしていると、店内のお店の人が私を怪しんでいるようで、やばい。と思って、すーはーと息を整える。


「いらっしゃいませ〜」

店内は、まばらで私と同じ制服を着ている人はまだいなかった。
ホッと安堵して、レジへ向かう。


「店内でお召し上がりですか?」
「あ、はい…」


食欲はないし、飲み物だけ頼もうかな。


「アイスティーで…」
「S、M、Lサイズがありますが」
「じゃあ、Mサイズで」
「四五〇円になります」


お金を払うと、すぐにアイスティーを受け取る。
通り沿いに面している窓側の席が開いていたので、私はそこに腰掛けた。

緊張しているせいでのどがカラカラになり、私はアイスティーをずずーっと吸った。
スマホを取り出して時間を確認すると、十六時を回っていた。

学校が終わったのは十五時四〇分。
それからここまで歩いて十五分はかかった。
もうついててもおかしくないはずなのに、あお先輩はまだ現れそうになかった。

約束忘れちゃったとか? それともすっぽかされてる? どこかで私を見張ってて、顔見て判断されちゃったとか?
……いやでも、あお先輩はそんな人じゃないと思うけど。

そもそも、約束の日って今日であってる?
不安になった私はSNSを開いて、メッセージを確認する。
やりとりをしたのが昨日で、『じゃあ明日』ってことだから、今日になるよね。
うんうん、と一人頷いたあとまたアイスティーを飲んだ。
< 47 / 125 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop