キミの名前を呼びたい。



「椛、今日あたし朝練あるから先行くね!」


いとこの梓ちゃんは、陸上部に入っている。


ショートカットで、ハキハキとしてて、そこら辺の男子よりカッコイイんじゃないかな。



私は首を縦に振る。



「筆談用のノートとか忘れないように!じゃ!」



あの日の事故以来、私は梓ちゃんの家に住んでいる。



梓ちゃんは私の素っ気ない文章でもちゃんと分かってくれる。



声が出ないこと以外は、普通なのに───



『行ってきます』



と書かれたページを梓ちゃんの両親に見せる。



「「行ってらっしゃい」」



梓ちゃんの両親は声が出ない私でも、嫌な顔せず引き取ってくれた。

< 2 / 72 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop