月光、散りばめて溶ける
その日は、月が本当に綺麗な夜だった。
降り注ぐような柔らかな光が水溜まりに反射して、
屈折した光は木々に触れて溶けていく。
意図せず口から零れた旋律に合わせるように揺れる月明かりは、
私を認めていてくれているようでとても嬉しくて。
月と私が奏でる旋律に合わせて舞う"彼"の姿が、
もうじきこの月光に溶けていくことなんて知りもしないで。

───

「イマジナリーフレンド?」

私がその言葉を初めて聞いたのは、小学生の頃だった。
何でも"空想上での友人"の事を指すらしく、当時の私からすれば
また意味のわからないことを話しているんだな、程度にしか思っていなかった。
そのイマジナリーフレンドというものは成長と共に居なくなるらしいし、
そもそも空想上の友人なんて必要としていなかった私には
クラスの人気者の弟のイマジナリーフレンドの話なんて
どうでも良くて。
自分でいうのもなんだけれど、幼少期は割りと友達が多かった方だし
一人っ子の私には両親がいつもついていてくれたから
空想上の友人なんて必要では無かったのだ。
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